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第11回コテキリの会|報告
参加者の声
参加者の皆様からお寄せいただいた
質問・感想等をご紹介いたします。
同志社大学古典教材開発研究センター
第11回コテキリの会
「めくるめくる和本の世界」
■日時 2025年9月7日(日)13:30~16:30
■場所 Zoomによるオンライン
コテキリの会代表による総括
9月7日(日)、第11回コテキリの会を無事開催することができました。当日は200名を超える申込を頂き、120名超のご参加を賜りました。当日は、基調講演、実践報告、特別インタビューを行い、大変刺激的な内容となり、登壇者、参加者の皆様にスタッフ一同、感謝申し上げます。
今回でコテキリの会(古典教材の未来を切り拓く!研究会の略称)として、第11回目、6年目を迎えることになりました。今年の春で、10回目を終了し、新たな第一歩を踏み出すタイミングになりました。
コテキリの会は現場を重視し、小中高大など校種を越えた教育の現場から新しい古典教育、古典教材を生み出していこうとしてきました。それは今後も変わらない方向性です。それと同時に、そうした現場をつなぎ合わせていける校種を越えたネットワークの結節点になっていければと思っています。この会がきっかけになって、新しい学びの場が誕生したり、従来の活動がさらに飛躍していくこともありました。
我々の活動の基本は、和本やくずし字を用いた新しい古典教材の開発と研究であり、児童や生徒、学生たちが自らの興味や関心に引き寄せて、古典を近しいものと感じ、古典を近しいものにしていく未来の文化の継承者になっていってくれるものと信じています。
今回は「めくるめくる和本の世界」と題して企画しました。実は、めくるめく和本の世界とページをめくるめくると掛けたつもりでした。うまく伝わったかどうか不安ですが、和本の魅力をいかに引き出していくのか、和本の持っている多様な教材性に注目してみたいという願いを籠めました。
第一部の基調講演は国文学研究資料館の木越俊介教授に「ためつすがめつ江戸の板本」というタイトルでお話し頂きました。古活字版研究を通して見えてくる和本・くずし字の世界を、もの静かな語り口とわかりやすいことばで解説頂き、当日の参加者も和本(古典籍)の多様性と版本研究の最前線を垣間見ることができました。研究と教育をしっかり結び合わせていく重要性にも気づかされたように思います。詳細は公開予定のアーカイブ映像をご覧下さい。
https://kotekiri20.wixsite.com/cdemcjl
第二部の実践報告は、愛媛大学の清田朗裕氏に「和本を通して近世の産業を学ぶ─実用的な文章を活用した古典教育─」と題してご報告頂きました。愛媛大学附属高等学校での実践でした。いままで取り上げられたことのなかった『農業全書』の本文をくずし字で読むことを通して、古典資料に積極的に取り組む生徒の姿勢が報告された。日本の言語文化に親しむためには、文学以外の資料も積極的に活用してはどうかという提言もあった。また、地域教材としての可能性や農業以外の産業に関する資料も教材にできるなど示唆に富む報告だった。
渋谷教育学園幕張中学校の藤原優里(ゆり)さんには、「見て・触れて・感じる「和本のテーマパーク」」と題してご報告頂きました。中学一年の9クラスで和本の体験授業を行い、和歌・地図・物語・千葉(地域)・双六・随筆の6グループでローテーション。「地図」「双六」などに興味を持ったというのはなるほど。実物に触れる歓びは何よりであり、古典を身近に感じるテーマパークのように感じたという。同志社大学古典教材開発研究センター『未来を切り拓く古典教材 和本・くずし字でこんな授業ができる』と、同センターの事業「和本バンク」をフル活用して、授業を企画・運営して頂いた。
今回は特別インタビューとして高校三年生の「世界」さんに「とある高校生がくずし字を修得し黄表紙の現代語訳本を完成させるまで」と題して登壇頂いた。自分自身で山東京伝の『作者胎内十月図』の稿本(草稿本)を翻刻し、注釈を施し、挿絵も自ら描いて、和綴じ本として販売に至るまでの制作を通して気づいたこと、学んだことを中心に、研究員スタッフ加藤弓枝がインタビューした。専門家も舌を巻く実践的な研究活動が浮かび上がり、将来楽しみな現役高校生の受け答えに驚かされた。会場などとのやりとりは、他の発表、報告とともにホームページに掲載予定。
https://kotekiri20.wixsite.com/cdemcjl
今回も、基調講演、実践報告、特別インタビューを通して、いかにして古典のおもしろさを伝えることができるか、その可能性を実感できる、刺激的で充実した意見交換を行うことができました。これもひとえに運営スタッフの懇切な対応と、多数の参加者の皆さまの熱意に感服するともに、ご協力に深く感謝申し上げます。次回は来年3月開催を予定しています。皆様との再会を楽しみにしています。
※『古典教材の未来を切り拓く 和本・くずし字でこんな授業ができる』(文学通信 2023.3)は、同志社大学学術リポジトリーからオープンアクセスで無料ダウンロードができます。現在1.1万件を超えるアクセス数を頂いています。ダウンロード数No.1です。今回の実践報告でもご利用頂きました。
https://doshisha.repo.nii.ac.jp/records/29485
2025年9月14日 山田 和人
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当日寄せられたご質問
◉第1部|基調講演への質問
WEBフォームからお寄せいただいた、木越俊介さんへの質問の抜粋です。質問者が特定できる記述などについては加工しております。当日の講演はこちらからご視聴いただけます。
Q1●大変勉強になりました。1点教えていただきたいことがあります。古活字は古典を広めた役割があるというお話がありましたが、その享受層は印刷部数の少なさから狭いという印象を持っていました。そのような理解で正しいでしょうか。古活字はどういった人たちに読まれていたのでしょうか。
Q2●烏丸本の徒然草がとても美しくて驚きました。こてまで見てきた古活字版は、確かに写本に近いですが、よくよく見ると嵯峨本伊勢物語など活字の横の高さは一緒で、それで写本らしさが減じている印象があります。どうして烏丸本は活字の高さがバラバラにできたのでしょうか。技術的には嵯峨本の方が高いのでしょうか。
Q3●『銀河鉄道の夜』でなんとなく聞いたことがある活字についても、イメージがしやすくなりました。もしこういった版面の違いなどをふまえて、中学や高校の生徒に興味をもってもらうための授業方法などイメージはございますでしょうか。
Q4●素人な質問ですみません。今日のご発表のようなご研究をされていて、最近、とても楽しい!と思われた時はどういった時でしたでしょうか。
◉第2部|実践報告者・登壇者への質問
WEBフォームからお寄せいただいた、登壇者への質問です。質問者が特定できる記述や登壇者の個人情報に関する記述などは加工しております。
■清田朗裕さんへの質問
Q1●以前農業高校で国語を教えていたことがあり、その意味で大変興味深いご発表でした。質問ですが、「現代の国語」「論理国語」でのご実践とのことでしたが、学習指導要領におけるどの指導事項を目標とされていたのか、お聞かせください。また、その目標を実現させるのに、くずし字がどのように役立ったのか教えてくだされば幸いです。
Q2●他教科とのコラボを想定すると農業全書のような実用書の利用は有益だと思いました。その他,国語以外の授業とのコラボができそうな作品群にはどのようなものがありますか?ご存じであれば教えてください。
■藤原優里さんへの質問
Q1●勤務校の生徒さんに人気の和本は双六と地図だったそうですが、ほかには好みそうなジャンルや分野はありますか?
Q2●中1の生徒達に古典学習への興味をもたせることに、くずし字や和本が役にたったという様子がよくわかりました。その後の古典学習への意欲はどのような感じだったでしょうか? 経験上、受験対策の暗記などで、結局古典を好きにはなれない、という声も耳にするのですが、いかがでしょうか?
■丗界さんへの質問
Q1●今回の黄表紙本は高校の古典探究の授業とは関係しているのでしょうか。
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アンカー 1
アンカー 2
参加者の感想
◉第1部 基調講演の感想
●板本の欠損や入れ木、紙の質から前後が分かること、懐かしく拝見しました。デジタルアーカイブや画像の保存などホンモノを見る機会が減ったことが残念です。モノの歴史なのでホンモノに触る、紙の息を聴く体験を学部生からでもできるといいなあと願っています。
●古活字版は、活字なので組みなおしが前提であるということを認識はしていましたが、具体的に同じ活字を使っている例を見ることが出来て腑に落ちた感覚でした。同じ活字を探すのは大変でしょうが、楽しそうに感じました。
◉第2部も含めた感想
■木越俊介さん・丗界さんへの感想
●古活字については、辞書的な意味のみを踏まえて授業で取り上げたり話したりしていましたが、今日の木越先生のご講演で、明確でしっかりした知識を得ることができました。非常に有益でした。世界さんの活動には大変驚かされました。ここまでのめり込めることを見つけらたのは素晴らしく、羨ましくすら思います。世界さんのような方は数千人、数万人にひとりのレアケースだと思いますが、お話をお聞きできて良かったです。
●大変、興味深かった。毎回刺激的な発表で、良かったです!次回も楽しみにしております。
■清田朗裕さんへの感想
●農業学校からなるというルーツから、農業に関する和本を扱うというのが、納得感もあり面白く感じました。博物館では和本の実用書が展示されていることも多いですが、古典は文学だけではないということを理解してもらうには、学校の授業で触れてもらうのが一番よいのではないかと思いました。
■清田朗裕さん・藤原優里さん・丗界さんへの感想
●今回も素晴らしいご講演、ご発表やインタビューを拝聴でき、充実感でいっぱいになりました、ありがとうございました。あらためて、中等教育におけるカリキュラムの中の和本の可能性について、実感した次第です。カリキュラムが学校ごとに多様であればあるほど、それに即した活用があり、また、和本文化そのものが、その多様に対応しうる大変幅の広いものであることをお示しいただきました。また、丗界さんのお話をお聞きして、和本の魅力はカリキュラムに無理に結び付けなくてもよい面もあるのかもしれず、学校教育の場での出会いがかえって和本の魅力を損なうものであってはいけないことにもあらためて留意する必要があると感じました。
■丗界さんへの感想
●大学時代、国文学科の近世文学ゼミで、山東京伝の黄表紙『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』を卒業論文の研究作品にしました。それがきっかけで、京伝の黄表紙を何冊か読みました。丗界さんが現代語訳にされた『作者胎内十月図』もその一つです。
ただ、この作品に稿本があることは知りませんでした。今回のコテキリの会を通して、高校生の丗界さんから稿本の存在を知り、私ももっと京伝作品を深く読んでみたいと強く思いました。
すでに社会人となり、古典文学に割ける時間はそれほどありません。それでも、黄表紙に対する丗界さんの熱意に刺激を受け、私も京伝作品の研究を続ければ、何かを「創作」できるかもしれないという夢を見ることができました。丗界さん、京伝の作品を選んでくれて本当にありがとうございました。
●丗界さんが自筆本に拘っている話を聞いて、自筆本に価値を感じているから、古典の壁を乗り越えられたのかなと思いました。
こんな面白い話があるとか、こんなことが分かって面白いよ!とか、コンテンツの魅力を紹介して惹きつける、ということを考えがちに思うのですが、それだけではなくて、価値があると思わせる方向も大事だなと最近考えていたので、我が意を得たような気持ちです。
過去を、倣うべき良き時代と考え、ナショナリズムがあった時代には、古典は当然価値のあるものでした。今、古典に価値を見出さない人が多くなった時代にあって、いかに古典を、と考えるとき、消費コンテンツとして興味を惹かせるよりも、学ぶ価値があり、難解な文法や、難解なくずし字を読み解くだけの価値があるのだ、感じられるように教える方が、益があるように思いました。
◉全登壇者への感想
●木越俊介さんのご講演、大変勉強になりました。古活字研究上、やはり徒然草は重要だと思いました。
清田朗裕さんのご報告、農業の関係の和書、利用の方法の方向性をお示しいただき、参考になりました。
藤原優里さんの実践報告も、工夫されていて学生への興味の喚起が上手く行ったのであろうことが伝わりました。古典文法の興味の喚起に関しても、和本の利用は考えられるのではないかとも思いました。
丗界さんのことは、かねがね存じておりましたが、男子だとばかり思っていました。なんでだろう… 今日の18時(※コテキリ注:当日18時が、丗界さんの黄表紙本の再販開始時間でした)、楽しみにしております
有澤さん・佐藤さんからのメッセージがあったのも、よかったですね。
●登壇の先生方と運営のみなさま本日はありがとうございました。私が初めて参加させていただいた感想を述べます。
まず、日曜日の午後にくずし字に興味を持つ方が100名以上参加されていることに驚きました。
そして、世界さんへコテキリの会からの質問がとても良かったです。世界さんが憧れている方からのメッセージを受け取って感動されていることがこちらにも伝わってきました。私は涙を流してしまいました。わかりやすく説明できるところもすごいと思いました。
それから、本日の話をうかがって、再びコテキリの会から和本をお借りして生徒に見せたいと思いました。
最後に、次回も楽しみにしていますので、案内を送信してください。
●今年は、中学1年生の書写と国語を担当しています。
本日の発表から、昨今、生徒の言語感覚が携帯端末等の影響により、短い文や単語のやりとりで日常が成り立っていると改めて思いました。だからこそ、あえて古典学習を通じて、漢字や国語の基礎知識力が身に付けられるものではないかとその可能性を大切にしていこうと思います。
やはり、国語に限らず、どの教科でも、画像やイラスト等のインパクトが生徒の学び・イメージ喚起に重要であり、だからこそデジタル教科書での挿絵や動画の工夫がすごいのだなと実感しました。
本日の実践例を参考にし、古典学習やくずし字について興味関心をもたせられるように授業改善をがんばろうと思います。
本日はありがとうございました。
●中学や高校の授業で和本に触れることで、現代人と古典との隔たりを少しでも埋めることができるのではないかと、古典の授業の可能性を感じました。また、和本は、教科書に載っている古文よりも読みづらいはずなのに、確かに生きていた人間が書いたものであるという感触が強いからかなぜか親しみやすい、不思議な存在だなあと改めて思いました。多くの実践的なお話を伺い、とても面白かったです。ありがとうございました。
●昨日は貴重な経験をさせていただき、誠にありがとうございました。
以前、丗界さんがSNSで発信されていた黄表紙の現代語訳版を見て、是非お話を聞きたいと思い応募いたしました。実際に参加してみると、木越先生の古活字版や伝本ごとの比較のお話や、学校での授業を通して調査されたユニークな研究の報告をされていて、どのお話も興味深く聞かせていただきました。初めて参加したのですが、大変勉強になりましたので今後も参加させていただければと存じます。ありがとうございました。
●木越先生のお話は、初心者でもわかりやすい丁寧なお話で、引き込まれました。閉会のお言葉から、版本はとても大切に作られていることに、改めて気づきました。だから現代の私でも、手に取った時に、携わった人たちのおもいなどが紙から伝わってくるのだ、と感じました。はじめて参加しましたが、今後も学ぶ機会にしていきたいと思います
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